大判例

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名古屋高等裁判所 昭和28年(う)613号 判決

論旨は要するに原判決が外国人登録法附則第八項の「旧外国人登録令の規定による外国人登録証明書(以下旧登録証明書と略称する。)を有する外国人」とは現に旧外国人登録証明書を有する者をいゝ、被告人の如く旧登録証明書を紛失した者は之に該当しないものと解し、被告人が同第五項後段の登録証明書の有効期間満了前三十日以内に新に登録証明書の交付申請をしなかつた者は同法第十八条第一項第一号に違反しない旨判示したのに対し、「旧登録証明書を有する外国人」とは現に旧登録証明書を有する者のみに限定さるべきでなく旧登録証明書を交付されたが紛失、盗難又は滅失により之を失つた者をも含むものと解すべきであるから被告人は右期間内に登録証明書の切替申請をする義務があると認められるべきに拘らず、原判決が之を否定し登録証明書を失い之を有していなかつた被告人に対し無罪の言渡をしたのは明に外国人登録法附則第八項の解釈適用を誤つた違法があり、また事実誤認があるというのである。

よつて原審が適法に取調べた証拠を綜合すれば、被告人は朝鮮人であるが予て青森県金木町において旧外国人登録令の規定により外国人として所定の事項を登録(第一四九三九号但しその後昭和二十六年九月青森県三本木町へ転籍)したが昭和二十六年度中にその登録証明書を紛失した儘之が再交付を申請しなかつたこと昭和二十七年三月二十五日浦和地方裁判所において外国人登録令違反(不携帯)罪により懲役四月(昭和二十七年政令一一八号により懲役三月に変更)に処せられ当時その刑の執行を終つた後同年八月十六日大村入国者収容所に収容され強制退去の判定があつたが被告人より異議申立があつた結果同月二十一日出入国管理令第五十条により法務大臣より在留期間一年の特別許可があつた旨入国管理局長より通知があつたので同年九月十日右の旨を伝え且つ在留特別許可書到達迄大村市外への転出を厳禁して同市松並町善隣会(代表趙宗大)を一時的住所として釈放したこと、同月三十日頃右在留特別許可書を交付せんとしたところ被告人は既に同所を立去り福岡市、小野田市等を経て津島市に来り、同年十二月八日登録証明書を携帯しない為、津島警察署に検挙せられたものであること及びその間外国人登録法附則第八項の登録証明書の切替申請をしたこともなく、又右特別許可に基く同法第三条の登録証明書交付申請をしたこともないことを認めることができる。

「旧登録証明書を有する外国人」とは原判決に云う如く現に旧登録証明書を所有するものに限り登録証明書を紛失して現に之を所持していないものを除外しているとは考えられない。又旧外国人登録令の規定により適式に登録証明書交付の手続を了したものは其の交付手続後右証明書の所有所持を継続していること又は紛失その他の事由で現に之を所持していないことは外国人登録法附則第八項の適用上何等関係のないものと考えるのが合理的であり合目的的でもある。然し同附則第八項は同附則第五項と対比して明白なる如く旧外国人登録令の規定によつてなされた登録手続で旧外国人登録令が外国人登録法の公布施行によつて廃止されなければその廃止の当時適式有効であつたところのものに付て之を外国人登録法の規定によつたものとみなしてその有効期間を旧外国人登録令廃止後まで延長した場合のものをその対象として延長された有効期間満了前の三十日以内に所謂切替登録の手続をなすべきものとしている。

之を本件に付てみるに前記説明の如く被告人には前記附則第八項による三十日の切替登録手続期間の終期である昭和二十八年十月二十八日の到来前に外国人登録法第三条第一項後段による登録事由が発生し、その登録は同条の規定により後記説明の如く同年九月十日より同年十月十日までを期限としているのである。斯様な場合には被告人に対し前記附則第八項の切替登録手続の適用なきものと云わなければならない。

従つて本件公訴事実は外国人登録法附則第八項の訴因及罰条によるべきものでないことになりその然らざることを前提とする検察官の控訴理由は爾余の点につき判断を為すまでもなく失当であつて採用できない。

尚予備的訴因について。

論旨は外国人登録法第三条における「当該事由が生じた日」を検察官は被告人が昭和二十七年九月三十日頃在留特別許可書の交付を受け得る状態にあつた日と主張したのに、原判決が右在留特別許可書が現に被告人に交付された日と解し右特別許可書が現に被告人に交付されていない以上被告人に同条の登録証明書交付申請義務を負わせることはできないとしたのは法令の解釈適用を誤つたものであるというのである。

よつて案ずるに被告人が前述の如く法務大臣から一年間特別に在留を許可する旨の裁決のあつたことが外国人登録法第三条第一項の「その他の事由により」上陸手続を経ることなく本邦に在留することゝなつたことに該当することは論旨の通りである。而して出入国管理令第五十条は第一、第二項において法務大臣は容疑者に特別在留を許可すべき事由があると認めるときはその者の在留を特別に許可する裁決をすることができる旨並びにこの場合在留期間その他必要と認める条件を附することができる旨規定し、右裁決は同条第三項により同令第四十九条第四項の適用については異議申立が理由ある旨の裁決とみなされるので主任審査官は同項により法務大臣から在留特別許可の通知のあつたときは直ちにその容疑者を放免しなければならないのである。而して右放免の日が外国人登録法第三条の「当該事由の生じた日」と解することを相当とする。この事は前記の特別許可裁決通知が放免と同時に又は之と前後してなさるべき在留特別許可書の交付が偶々右放免により遅延し、又は交付されなかつた場合と雖も同様と解すべきものと思料する。之を本件と見るに主任審査官に特別許可の裁決通知があつたのは昭和二十七年八月二十一日被告人放免の日は同年九月十日であるから被告人は右特別許可書受領の如何に拘らず右放免の日より三十日以内に登録証明書交付申請をしなければならない。然るに被告人は之を為さなかつたのであるから右第三条第一項に違反したものである。論旨は結局理由があり、原判決は破棄すべきである。

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